パートナー企業様の代表に、ご支援の思いや意図をうかがうインタビュー企画。第1弾は、株式会社CLINK代表取締役社長・藤倉晴樹さん(写真)にお話をうかがいます。Intel Biloba Tokyo (以下、Biloba)の前身「東大ユナイテッド」時代には選手としても活躍した藤倉さんが、退団しチームが改名した現在でもサポートを続ける理由について、ご自身の足跡とともに語っていただきました。「同じ轍は踏まない」―サッカーで磨く経営者としての思考プロセス―まずは、藤倉さんとBilobaの繋がりについて教えてください。 自分はサッカーを高校で一度諦めたのですが、平日朝晩に都心のグラウンドで開催されている有志の個人参加サッカーに2015年ごろから参加するようになり、自分のなかでコンディションが戻ってきているなという感覚がありました。体が動くようになるにつれ、「選手としてもう一度チャレンジしたい」という思いが湧きあがってきたんですよね。 当時は地元近くの栃木県の社会人チームでプレーしていたのですが、会社を設立し遠方の試合会場に通うことが難しくなったのも、ちょうどいいタイミングでした。そこで、当時東京都2部リーグに所属していたBilobaの前身である「東大ユナイテッド」に入団させてもらった。東大ユナイテッドには当時から、大学体育会出身者や高校選手権で活躍した選手たちが在籍していて、彼らと一緒にプレーできたことでもう一度サッカー選手としての自信を取り戻せた。 佐野日大高校時代は1年の冬からトップチームを何度か経験できたものの、集大成である最後の選手権ではメンバー入りできず忸怩たる思いがあったんですよね。そんな自分にとって、東大ユナイテッドで過去を清算できた、忘れ物を取り戻せた感じはありました。もう一度、本当の意味でサッカーを再開させてもらえた。そういう貴重な場を与えてもらえたことが、すごくありがたかったです。 -2017年、2部カップ戦優勝後の1枚。写真左下 33番が藤倉さん―その後チームを離れてからも、パートナー企業という形でBilobaをご支援いただいています。 自分が所属していた都2部の時代からチームを見ているぶん、現在の都1部のレベルにいつづけることが簡単じゃないということは理解しているつもりです。そのなかで、母体となる集団がなく練習環境もないなか、1部に残ってしかも毎年順位を積み上げている。その点へのリスペクトは大いにあります。東京蹴球団(1917年創立) や CERVEZA FC 東京(1984年創立)のように長い歴史があるわけでもなく、新興チームなのにもかかわらず難しいリーグの中で順位を維持しているのはシンプルにすごいなというか、それに対しての応援の意味合いは強いですね。 ―藤倉さんご自身、一線を退いた今でもサッカーは継続されていますよね。 サッカーって、会社経営に通ずるものがあると僕は考えています。むしろ時間が区切られているぶん、サッカーのほうが難しい。経営判断よりも意思決定を求められる速度が速く、身体的な動作もあるサッカーのほうが会社経営よりも難易度が高い。つまり、仕事と同じ思考プロセスが凝縮されているのがサッカーだなと。自分のなかでは、経営のトレーニングをしているような位置づけですね。仕事で取る戦略や意思決定を導くまでの思考プロセスのデモンストレーションとして、サッカーをやっているような感覚です。 優勢に進んでいたはずの物事の風向きが、急に変わってしまう。そういうことは仕事でも必ずあります。それがサッカーの場合はクイックに、秒単位分単位で起こってくる。日常で流れている時間よりもコンパクトに、次々と解決すべき課題が出てくる。僕がサッカーを好きな理由はそこなんです。「ボールを蹴る」という動作が楽しいというよりは、仕事の思考に通ずる部分。日常を凝縮した判断の連続というところに、おもしろさを感じています。サッカーなら失敗しても仕事に影響はないですし、思考を磨くトレーニングにちょうどよいなと。 ―確かにサッカーは常に局面が変わるので、「切り替え」というワードはどのチームでもよく耳にしますね。 それゆえ、サッカー経験者には人材としての信頼もあります。サッカーをやっている人は変化に強く、リバウンドへの対応も素早い。当社の主戦場であるインフルエンサー業界では、朝令暮改もざらにあります。サッカー経験者ならそれにも違和感なく対応できるのではないかと、そういう人材を採用することも多いです。 当社の経営戦略も、サッカー的な考え方に近いかもしれません。サッカーで相手を観察して駆け引きしながらプレーするのと同様に、仕事でもお客様を見てこうしよう、競合他社を見てこうしようと、90分ではなく日常の時間軸で戦っている。サッカーの試合中のような感覚で、日々仕事に取り組んでいます。 ―サッカーに通ずる経営戦略。これは普段から、どのようなことを意識されているのでしょうか。 学生時代、自分はあまりゴールから逆算して考えるのが得意ではなかったんですよね。「レギュラーをとる」という目標からの逆算ではなく、今やれることをなんとなく積み上げてしまっていた。例えば、キックの練習も試合でのイメージに結びつけられておらず、練習のための練習になっていたんです。だから、プレッシャーがなければそれなりのボールは蹴れるけど、試合ではうまくいかないということを繰り返していました。 そのときの失敗を取り返すべく、起業した際には「常にゴールから逆算して考えよう」と。高校時代に味わった挫折感や失敗は、絶対に繰り返しちゃいけない。そのときにできなかったことを、仕事というフィールドを通して体現することを意識しています。 -CLINK社はクリエイター・インフルエンサー向けに幅広いサービスを提供している―“ゴールから逆算”するうえで、いま CLINKではどのような未来を描いていますか? 近い将来、インフルエンサー業界、特にYouTubeエージェント領域において、業界1位の売上高をめざしています。今の業界内のシェアや売上げを鑑みても、現実的にめざせる目標かなと。現在、徐々に業界2位のグループに迫ってきていて、上位グループのなかではCLINKが唯一黒字なんですよね。健全にここまできているので、可能性はあるなと。 その目標から逆算して取り組んでいることとしては、効果的なターゲットに絞ってそこにリソースを集中投下すること。これまでの実績から、お客様のマーケティング支援に関してYouTubeやインフルエンサーの広告効果を、最大限に発揮できる業種や事業規模が明確になってきました。具体的には、年商10~200億円規模のECサイト中心で物販事業を行っている企業。 そこが最もYouTubeでの広告効果が出やすく、取引高もwin-winになりやすい。1,000億円以上の規模になるとTVCM枠になってきて、そこのコンペは大手広告代理店の領域になるのでなかなか勝てない。 自分たちが最も輝ける、お客様の満足度を最大化できる領域で着実に結果を出すこと。そこに集中して提案活動を行うことで、ここ数年で売上げ収益が数十倍に伸びました。今年もその戦略で、成果を積み重ねたいなと考えています。 ―最後に、Bilobaの選手たちへメッセージをお願いします。 社会人サッカーのチームメイトは、それぞれ家族や仕事等いろんな生活の優先順位があるなか、何かの縁があって一緒になったメンバーです。お互いに刺激を与えながら新たな気づきを得て、各々のよりよい人生に繋げてほしいと思います。 過去に、僕がBilobaを支援していたおかげで知り合った選手がCLINKで働いてくれたことがありました。彼のおかげで会社がいい刺激を受け、現在も企業として成長を続けさせてもらっています。何がどこでどう繋がるかわからない。チームでの出会いを大切にしながらサッカー以外のことでも高めあって、Bilobaにかかわる人たちが幸せになれたらいいんじゃないでしょうか。 当然サッカーでの勝利も大事ですけど、勝負の世界で結果が出るかどうかは運の要素もあるじゃないですか。もちろん、その確率を上げるために日々みんな努力しているとは思います。ただ、結果が出ないからといってすべてが無に帰すわけではないし、そこをめざす過程にも宝物は存在していると思うので。その宝物に気づくためのアンテナをしっかり張って、自分の人生を豊かにしていってほしいですね。 (了)藤倉 晴樹(ふじくら はるき)さん株式会社CLINK代表取締役社長。 1985年2月生まれ。埼玉県羽生市出身。兄や浦和レッズユースに通う親戚の影響で、幼少期からサッカーを始める。高校選手権出場を目指して佐野日大高校に進学するも、最後の選手権ではメンバー入りできず挫折を経験。卒業後は、日本大学法学部に進学。大学時代はファミリーレストランでアルバイト中心の生活を送り、そこで仕事の楽しさに目覚める。2007年、新卒でサイバーエージェントに入社。アメーバブログ関連事業やインフルエンサーマーケティング事業に従事する。2015年9月に独立し株式会社CLINKを設立。2024年より株式会社Kiiiの代表取締役社長を兼任。Intel Biloba Tokyoの前身である東大ユナイテッド在籍時には、東京都2部カップ戦優勝(2017年)、クラブチーム選手権東京大会優勝および関東大会準優勝(2018年)に貢献。チーム退団後も趣味でサッカーを続ける傍ら、パートナー企業としてBilobaを支援している。(聞き手・構成:多淵大樹)